ああ、うるわしのオマーラよ。舞台に登場するや、一面にあざやかなオレンジ色のクロサンドラが咲きこぼれるよう。齢(よわい)を重ねるごと磨かれてつやを増す、比類なき歌声。おっと、かの花はカリブ産でなく、インド洋沿岸原産の多年草だったか。
最新作「グラシアス」をたずさえ、世界ツアーの一環で実現した当公演。彼女は、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに参加したどの重鎮よりも、長らく日本でいつくしまれてきた歌い手だ。69年来、11度目の訪日。
「ありがとう、私に呼応してくれた人に感謝を……愛するあなたへ便りと叫びを、四方の風に乗せとどけよう」と歌われる表題曲は、なんとも軽やかなサンバ。キューバ若手精鋭メンバーに加え、編曲をつとめるのがサンパウロの7弦ギタリスト。従来より、古典曲の占める割合はわずか。むしろ、自身の芸歴を優しくなぞるかのように、50年代フィーリンや70年代新トローバの歌ども、近年のブラジル交流成果の歌をつむいでゆく。
77歳にして新たな輝きを放つ、オマーラの歌世界。ごりごりのキューバ音楽ファンにすれば、クラーベのリズムとゆるいサンバが交錯するアレンジは、いささか乗りきれない心地がしたことだろう。が、これぞ彼女の、寛容と自由精神のあらわれ。
世界的なブエナ・ビスタ現象以降、彼女は懐古イメージを裏切らぬソロ作を、すでに2枚発表した。いまだ同商標看板をかかげつつも、ここにきて新境地の開拓にためらいをみせない。ま、現ブエナ・ビスタを、ブラジル人がとり仕切っているという、裏事情もあるらしいが。
さる4月に他界したマルティニークの英雄、エメ・セゼールの至言、「凱旋(がいせん)の集いには、すべての者を招く余地がある」を思い起こさせる、名花のみごとな飛翔(ひしょう)であった。10月1日、東京厚生年金会館。(音楽ライター・佐藤由美)
毎日新聞
この手のものは見たコトないんだよなぁ。
1度チャレンジせねば。
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